研究内容

当教室が取り組む最先端医療の臨床・研究
- 難病克服を目指して -

1. 基礎的研究

1) COPDにおけるマイトファジーの関与に関する研究

オートファジーは細胞内恒常性維持やエネルギー産生に重要な働きを担っている。この作用は、他の細胞内小器官に対しても働き、特に傷害ミトコンドリアに対するオートファジー作用をマイトファジーと呼ぶ。既に我々は、COPDとオートファジーの関連を報告しているが、これを発展させ、現在はマイトファジーを制御する分子の動態と酸化ストレス、老化等の関係を検討しており、重要な知見が得られつつある。今後はさらに研究を深め、病態リスクの診断や、治療的介入の可能性を探って行く。

2) 喫煙刺激における気道上皮の細胞老化およびSIRT6の働きに関する研究

高齢化社会の到来に伴い、呼吸器疾患は人類が取り組むべきもっとも重要な課題である。外界と直接接する肺は、感染症、肺癌、気管支喘息、COPD、間質性肺炎といった、全く性格の異なる病気が増加し続けている。いずれも加齢と深く関連するために、WHOの報告では、2030年にはCOPD、肺炎、肺癌が、全世界における死亡原因の3, 4, 5位になることが予想されている。教室としては、これらのコモンな呼吸器疾患の迅速かつ正確な診断、エビデンスに基づく治療、さらにはそれにつながる基礎研究を行っている。

3) 呼吸器疾患におけるライソゾームに関する研究

オートファジーは傷害タンパク等を囲むオートファゴゾームと酸化成熟したライソゾームが融合しオートリソソームとなって、内容物を分解する過程である。したがってライソゾームの生成分化はオートファジーの重要な制御過程である。近年このライソゾームの成熟やオートファジーに関与する転写因子の幾つかが同定された。これらの転写因子はライソゾームとも結合することが示され、オートファジー制御の重要な役割を担っていると考えられる。ライソゾームの細胞内での働きと疾患発現のメカニズムの関係を検討している。

4) 線維化亢進環境下における線維芽細胞の活性化に関する研究

IPFの組織にみられる線維化巣(FF)では、TGFβ活性化により筋線維芽細胞への分化増殖がみられると同時に、その筋線維芽細胞でのオートファジー機能不全が指摘されている。FFなど線維化亢進環境における筋線維芽細胞の活性化メカニズムを検討するために、呼吸器系初代継体培養細胞を用いて検討を行っている。筋線維芽細胞活性化メカニズムのターゲットが分かれば、IPFのみならず多くの線維化病態メカニズムや治療の端緒になることが期待される。

2. 臨床的研究

1) 全身疾患としてのCOPDに関する研究

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙を主因とし末梢気道炎症から気流制限を呈する病態である。近年COPDは呼吸器のみの疾患ではなく、全身性炎症を示す疾患である事が明らかとなってきている。当科では本院内科系外来に通院する喫煙者に関する前向き研究をおこなっている。これにより、各種臨床生体情報、併存症、酸化ストレス、全身性炎症等と、感冒、入院、増悪、死亡、肺機能減衰等の予後との関連を検討している。

2) 呼吸器感染症における新たな臨床指標の確立に関する研究

細菌性肺炎や結核を含む呼吸器感染症は、抗菌剤の進歩した現代においても、死亡原因として最も重要な病態である。これに対する、的確な診断や予後の予測は重要な研究課題である。細菌性肺炎を正確に診断するためのバイオマーカーの検討、免疫抑制状態での結核感染診断に関する臨床指標の検討、重症結核の予後予測に関する臨床指標の検討等を行っている。その有用性を確立し、実効的な呼吸器感染症に関する診断と治
療のフローチャート策定を目指す。

3) 肺癌化学療法における治療予測因子に関する研究

進行非小細胞肺癌は予後が極めて悪く、化学療法も奏功率が30~40%と効果は不十分である。また治療薬剤も高価で個人、社会のレベルで経済的影響も大きい。したがって患者の薬剤感受性を弁別し投与する個別化医療の概念は極めて重要である。現在EGFR遺伝子変異とEGFR-TKIの治療効果については、重要な関連性が指摘されている。当科では、このEGFR遺伝子変異と他の治療法の治療効果との関連にも注目している。これらの研究を通じて、肺癌化学療法患者における個別化化学療法のストラテジー確立を目指す。